「夏は相場が動かない」と昔から言われてきました。参加者が休暇に入り、出来高が落ち、方向感のない日が続く。いわゆる夏枯れ相場です。
私も11年この世界にいますが、この数年、夏の相場の性格が変わってきたと感じています。静かな時間が長いのは今も同じ。ただ、静かな時間の合間に、突発的に値が飛ぶ。この記事では、なぜそうなっているのかを整理します。
夏枯れ自体は、今もある
まず前提として、夏に出来高と流動性が落ちること自体は今も変わっていません。機関投資家の担当者も休みます。板は薄くなります。ここまでは昔と同じです。
出来高そのものの読み方については、ボラティリティと出来高 ― 「動きの大きさ」を読むで詳しく書いています。あわせて読むと、この記事の話が立体的になると思います。
変わったのは、その薄い板の上で誰が売買しているか、です。
板の主役が、人間から機械に変わった
米国株式市場では、出来高のおよそ6〜7割がアルゴリズム取引によるものとされています。2000年代前半には15%程度だったものが、20年でここまで増えました。高頻度取引(HFT)の会社は市場参加者のごく一部にすぎないのに、出来高では大きなシェアを占めるという偏った構造も指摘されています。
ヘッジファンド側も同じ流れです。近年の調査では、6割以上のファンドが取引額の大半をアルゴリズムで執行していると回答しています。約3分の1は、ポートフォリオ取引の8割以上を機械に任せている。裁量で注文を出す人間よりも、条件に反応して自動で注文を出す機械のほうが、いまの板では多数派なんですね。
そして学術研究では、アルゴリズム取引は流動性や価格効率を改善する一方で、短期的なボラティリティを増加させるという結果が報告されています。「機械が増えて短期の値動きが荒くなった」という肌感覚は、感覚だけの話ではないということです。
薄い板 × アルゴ = 夏でも値が飛ぶ
ここで夏枯れの話に戻ります。
板が薄い時期に、ヘッドラインへ瞬時に反応する機械が多数派としてひしめいている。この組み合わせが何を生むかというと、「普段は静かなのに、ニュース速報ひとつで値が一瞬で飛ぶ」相場です。
要人発言の速報、指標のヘッドライン、地政学のニュース。人間が記事を読んで意味を考えている間に、アルゴリズムは見出しの単語に反応して注文を出し終えています。板が薄ければ、その注文を受け止める反対側がいない。だから値が飛ぶ。飛んだ値を見て、別のアルゴリズムがさらに反応する。
「夏は静か」と「夏でも突発的に動く」は、矛盾しているようで両立します。静かな時間が長いからこそ、動くときの動き方が極端になる。これが、いまの夏枯れ相場の実像だと私は見ています。
ゴールドの場合、時間帯によって板の厚みが大きく変わることも影響します。この点はなぜゴールドは夜中に動くのかとGOLD(ゴールド/XAUUSD)完全ガイドで整理しています。
この構造を、前提として考える段階にきている
ここは、はっきり書いておきたいところです。
「夏は動かないから休む」「有事だから金は上がる」といった、昔から言われてきた経験則は、そのまま通用する場面が減ってきています。板の主役が変わり、反応の速度が変わり、静かな時間と激しい時間の落差が広がった。これは一時的な地合いの話ではなく、市場の構造そのものが変わったという話です。
だから、これからの相場を見るときには、「いま自分が見ている値動きは、誰がつくったものか」を一度考える必要がある。人間の判断の積み重ねなのか、それとも見出しに反応した機械の連鎖なのか。この問いを持っているかどうかで、同じチャートを見ても解釈が変わってきます。
では、どう付き合うか
ここまでを踏まえると、やることはむしろシンプルになります。
飛んだ値を追いかけないこと。速報で飛んだ動きは、機械同士の反応の連鎖であって、そこに後から人間が乗っても分がいいとは言えません。追いかけて取る対象ではなく、「板が薄い時期だ」と確認するための材料です。
そして、静かな時間を「何もしない練習」に使うこと。値動きが少ない週にわざわざチャートに張り付いて、無理に売買の理由を探す必要はありません。自分の見ている水準と形がそろうまで待つ。それができるかどうかは、相場の知識とは別の技術です。
この「待てるかどうか」が最終的に何を分けるのかは、トレードで生き残る人・退場する人の違いとFXに挑戦する上で大切な事にも書きました。
相場の構造は変わりました。ただ、変わったからこそ、「待てること」の価値はむしろ上がっていると感じています。
ここから先の話
薄い板で値が飛んだとき、実際にどの水準を見て、どこまでを「待ち」と判断するのか。この続きは、毎週日曜21時のライブ配信で、実際のチャートを見ながら話しています。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
